秋のはじめに

 連日これでもかと暑さ情け容赦のないころ、ふと思い立って実家に遊びにゆきました。東京から一時間あまり。大抵東京より2℃は低く、一年を通して風が吹き抜けるところです。
 帰りがけ、長く過ごした部屋から、何冊か抜き出してきました。一冊は京都の本。先月、京都へ参りました。時間があれば、どこか訪ねたいと思って・・(ひどい緊張と睡眠不足とで、それどころではありませんでした。残念!)。もう一冊は、いつも手元において眺めていた本。同じ方が書かれた本は何冊かあるのですが、一冊だけカバンに入れました。
 台風の雨風が吹き荒れて、静かな夜半。その一冊を思い出しました。・・ページごとに、伝統と郷愁にみちたなつかしい筆調。読むというより、味わわせていただく本。いまも変わらない・・温かい心が宿っている。
 その方の今が気になって、・・探してみました。なんと、この夏、日本を去られたとのこと。

 そうですか・・・そうだったのですね。虫の音になぐさめられ、わかったような気でいます。