温かなとき

 日曜日の朝。母に電話。手が痛いといって病院へ行ったとのこと。
 午後、母に電話。
 いつになく気弱な声。

 話を聞いているうちに、どこかで同じ話を聞いたような・・。
 そうそう、祖母でした。
 痛い場所が同じ。どう痛いのって聞くと、また同じ。

 祖母は、野菜の皮むきをしながらよく昔話をしてくれました。
 手が痛くなってから、わたしに包丁を渡し、あれこれ指南。なんだか嬉しそうな顔をして・・。いま思いますと、祖母は、辛抱強いだけでなく、ずいぶん可愛いひとでした。
 おかげで、包丁を使いはじめたのでした。
 居間にふたりで古新聞を広げて・・。
 おぼつかない手元をみつめながら昔話をする祖母の姿がよみがえる。

 夏も冬も、温かなときでした。