つつじ余談

 本殿裏の路地に、いつも出ている屋台の列。
 ここの焼そばは、おいしいとなかなかの評判。
 店先に、ひとつだけありました。

 「最後のひとつ・・まだ熱いからね」「!!」
 脇のテーブルにつき、頂く。
 初夏のような風が気持ちいい。

 「ひとつ、ください」と少女の声。
 小学校にあがったくらいでしょうか? 白い帽子が可愛い。
 「ちょうど、なくなったところ。これから作るから・・」 「早くしてね!?」
 「年寄りをいじめちゃいけないよ。ゆっくりでいいですって、いわなくちゃ」「・・??」
 女の子は、立ちすくんでいる。
 おじさんは、丸いキャベツをとりだして、「持って帰って作るかい??」といいながら、ざくざく切り始めた。
 女の子は、だまって広い鉄板をみつめている。

 悪いような気がして、うつむいたまま、もくもく食べていた。
 ふと、顔をあげてみると、その子は、向かいの屋台で遊んでいる。
 ちらちら、鉄板の方をみながら、がんばって遊んでいる。
 皺深いおじさんは、もくもくと作っている。

 作り慣れた味は、美味しかった。
 叱られても、守られていることを、女の子は感じ取っていたようでした。