絵はがき

 祝日は、ぽかんと過ごしたくて・・
 実家の近くに油絵の先生がお住まいで、習いに行っておりました。まだ小学校にあがる前のこと。先生の方針だったらしく、デッサンなしで、いきなり絵筆を握っておりました。「まず、絵のイメージをつくりなさい」 デッサンの代わりだったのでしょう。
 イメージをお話すると、「その通りに、描いてごらんなさい」 やっと木炭を貸してくださる。「線は少しでいいのよ」
 線を描いていると、先生は後ろに立っていてくださる。なんにも言わないで。「そうなの?」「・・」「それでいいなら、絵の具でいいわ」「・・」
 あるとき、自宅に咲いていたパンジーを描いたときのこと。頭の上から腕が伸びてきて、ぎゅっと太い線を描かれました。「こうよ!」「うちのパンジーを、ご存じですか?」「知らないわ。でも、こうだと思うわ」「・・」
 小学校にあがって、しばらくして、先生は遠くに引っ越されました。お教室は閉鎖。とりのこされた私は、さびしかったものです。
 絵の展覧会に参りますと、気に入った絵の絵はがきを思い出にするようになりました。絵はがきは、いつだって楽しい思い出の代わりなのです。