清流のほとりで

 雨かしら?晴れかしら? よほど気になっていたのか、夜明け前にめざめる。
 彫刻展が開くのは午前11時。めずらしく早々と次回の「授業準備」。家を出るころには、雨あがり。
 最寄り駅の最寄り出口をでましたら、日曜日の目抜き通り。地図どおりにゆくと、急に路地が細かくなる。地図どおりに三度歩いても、あるのはちがうギャラリーの看板ばかり。
 額縁屋さんで、道をたづねる。「この道まっすぐ40メートル先の小さなギャラリーですよ」いわれた通りに歩いたつもりが、あるのは、やっぱり別のギャラリー。
 もう帰ろうかと思いつつ、このまま帰るのもさびしい。落っこちそうな階段を上ってみる。細い階段をのぼりきると、作家本人がいらした。「こんにちは、どうぞ」
 道をたづねに参りましたともいえぬまま、作品を拝見。ボールペン画の個展。3畳もないくの字型展示場。何々社製のボールペンで描きましたとのご説明に、絶句。「ボールペンなんですね・・」というのが、やっと。
 うれしそうな作家さんの顔をみていると、早々に帰れない。一枚ずつ、何度も作品をながめる。「何かいわなくちゃ・・」必死になってみていると、不思議と語りかけてくるものがある(ように思えました・・)。「斜めから見ると、いいですね」「??」
 ああまずいと思ううち、眼鏡の作家さんは、斜めから我が子らをしげしげとみている。「気づきませんでした。正面から、そう描けるといいなあ。どうしたらいいでしょうね?」「??」
 万事休す・・展覧会最終日の終わりは早いのです。訪ねた目的を告げると、奥から画廊のご主人がにこにこしながらあらわれて、マップに道すじとマークを付けてくださいました。
 申し訳なく、失礼し、教えられた道をゆく。めざす彫刻展がございました!
 一歩入ると、笑顔の彫刻家があらわれる。ん?「どうぞ、手でさわってください」
 こちらは4畳くらいのギャラリー。ひょいと作品を持ち上げて、手渡されてしまいました。「どれもいわれがあるんですよ」 ひとつひとつの作品について、彫刻家が話を始められる。「さわってもらうと、光るんです」 ご説明を伺うたびに、作品をなでてみる。
 手足のたくましい女の子像は最近の連作。座像に立像・・のびのびと初々しい。ふるさとの清流をイメージされているとのこと。
 彫刻の作り方云々はじめ、ご説明は、ときおりむずかしい。「評論を聞きたいなあ」「・・・!!」
 初々しい女の子の顔。ほおの輪郭の線、目元、口元。話をしてくださる彫刻家の顔そのものでございました。